マキネッタ(モカ・エキスプレス)の抽出原理・クレマについて

マキネッタ

コーヒーの抽出器具コーナーでは必ずと言っていいほど見かけるのが、このマキネッタ。小柄なフォルムからは想像できないほど濃厚なコーヒーが抽出できるのが大きな特徴ですが、いったいどのような仕組みなのでしょうか。




マキネッタとは

マキネッタは水を直火にかけて沸騰させ、生じた蒸気圧を利用してコーヒーを抽出する器具です。

20世紀前半にイタリアのビアレッティ社によって発明され、同社は現在でも代表的なモデルを販売し続けています。

日本などではマキネッタと呼ばれることが多いですが、ビアレッティ社の登録商標であるモカ・エキスプレス、その他メーカーの商品はモカ・ポットなどと呼ばれることもあります。

本場イタリアでコーヒーといえばエスプレッソを指すことが一般的です。手軽にエスプレッソに近いコーヒーを抽出できる器具として、マキネッタは一家に一台は必ず用意してあるといわれています。

マキネッタで淹れたコーヒーをモカコーヒーと呼ぶことがありますが、コーヒーの銘柄の「モカ」を表しているわけではありません。マキネッタで淹れれば、モカ以外のコーヒー豆でもモカコーヒーになります。ややこしいですね。

マキネッタの抽出原理

GIF画像:Wikipediaより

前述の通り、マキネッタは水を火にかけ沸騰させたときに生じる蒸気圧を使ってコーヒーを抽出します。

最下部のポットに入れた水を加熱すると、蒸発の際に生じる水蒸気の力でポット内の圧力がどんどん上がってゆきます。圧力は唯一の逃げ場である中心の管を通ってポット外に出ようとしますが、管はお湯に浸かっていますので、お湯も一緒に押し上げられます。

押し上げられたお湯の通り道にコーヒー豆を用意しておき、そこを通過させることでコーヒーを抽出する、という仕組みになっています。

ドリップコーヒーは重力(注ぐお湯の重さ)でじっくりとコーヒーを抽出しますが、マキネッタは非常に高い圧力をかけて瞬時に抽出します。

そのため少量のお湯だけでエスプレッソのような濃いコーヒーを抽出でき、さらに雑味やえぐみまで出てしまう前に抽出を終えることができるのです。

電気式エスプレッソメーカーとの違い

マキネッタはその仕組みから「直火式エスプレッソメーカー」と呼ばれますが、そのほかにも「電気式エスプレッソメーカー」という器具があります。

電気式エスプレッソメーカーは、内蔵されているポンプで高い圧力を発生させてエスプレッソを抽出する器具です。カフェに置いてあるような大型の機械は、こちらにあたります。

日本ではどちらもエスプレッソメーカーと呼ばれていますが、以下のような違いがあります。

そもそも厳密にはエスプレッソではない

直火式と電気式の一番の違いは、かけられる圧力の大きさです。

メーカーにもよりますが、電気式でかけられる圧力は9気圧ほどであるのに対し、直火式は3気圧程度にしかなりません。

抽出したコーヒーもやはり電気式の方が濃厚で、さらには「クレマ」と呼ばれるクリーミーできめ細かい泡ができます。一方で直火式は電気式ほどの濃厚さはなく、クレマもほとんどできません。

これらの違いから、本場イタリアでは高圧力の電気式で淹れたもののみをエスプレッソとし、直火式はモカコーヒーという全く別の飲み物として区別されています。

手軽さは電気式に勝る

電気式は濃厚なエスプレッソが淹れられる反面、電源が必要だったり抽出後の後片付け・メンテナンスが大変だったりといろいろとわずらわしい部分があります。

それに比べ直火式は熱源さえあれば屋外でもコーヒーを抽出でき、さっと洗うだけで片付けられるのでとても手軽です。小型なので置く場所も選ばす、さらに比較的安価で購入できるのも大きな魅力です。

イタリアでは家庭で飲むコーヒーは直火式を使い、電気式のエスプレッソを味わうときはカフェで注文するなどと使い分けているようです。

使えば使うほどなじむのが魅力

マキネッタのおもしろさの1つに、使い込んでいくほど器具にコーヒーの香りや油分が染み込んでいき、より好みの味わいを出すことができることがあります。

コーヒーを淹れるごとに味わいが変化していく、まるで“育てて”いるような感覚を楽しめるのがマキネッタならではの魅力です。