この記事では、コーヒー豆を自宅で焙煎する方法やコツについて紹介しています。焙煎というと難しそうなイメージがありますが、ポイントをおさえれば誰でも簡単に焙煎することが可能です。
焙煎(ロースト)とは
焙煎(ロースト)とは、収穫・精製後のコーヒー豆を加熱してコーヒーの風味を引き立てる作業工程のことをいいます。
コーヒー豆といえば茶色い姿をイメージしやすいですが、収穫したての状態(生豆)は緑っぽい色をしています。味はいかにも「青くさい味」がするだけで、コーヒーのような酸味や苦味などは一切感じられず、飲めたものではありません。
この生豆を焙煎することによって豆の成分が化学変化を起こし、コーヒー独特の苦みやコクなどの風味が生まれて「飲める」コーヒーになっていきます。
どのくらい焙煎するかによって、コーヒー豆の味や香りは大きく変わります。まさにコーヒー豆の味を左右する、とても重要な工程です。
焙煎時間によるコーヒー豆の変化
焙煎度合い | 焙煎時間 | 味 |
---|---|---|
ライトロースト | 短い ↑ ↓ |
酸味が強い ↑ ↓ |
シナモンロースト | ||
ミディアムロースト | ||
ハイロースト | ||
シティロースト | ||
フルシティロースト | ||
フレンチロースト | ||
イタリアンロースト |
焙煎度合いは、焙煎する時間の長さによって主に8段階に分けられます。
一般に焙煎時間が短いほど酸味が強く、長いほど酸味が抜けて苦味が強くなります。また焙煎していくにつれてコーヒー豆の色は徐々に茶色くなっていき、クロロゲン酸の量も減少していくといわれます。
それぞれの焙煎度合いの味や成分の特徴については、以下のリンク先で詳しく紹介していますのでご参考ください。
焙煎の工程・流れ
まずは、焙煎の工程について理解しましょう。どのやり方でも基本的な流れは同じなので、必ずチェックしておいてくださいね。
水抜き
コーヒー豆の中には全体の1割ほどが水分なので、このまま焙煎しようとしても熱が奥の方まで届かずに「生焼け」のような状態になってしまいます。
中までしっかりと熱を伝えるための前準備として、まずは弱火でじっくりと温めてコーヒー豆内の水分を飛ばす作業を行います。
緑色だったコーヒー豆がほんのり茶色くなり、鍋や焙煎機をゆすったときの音が「シャカシャカ」と乾いたような音になったら、しっかり水分が抜けた合図です。豆の種類や状態にもよりますが、目安時間は5分程度です。
火力を上げて焙煎
水分が抜けたら中火から強火まで火力を上げ、本格的な焙煎に移ります。
コーヒー豆の焙煎具合いににムラができないように、常に鍋や焙煎機をゆすったりヘラでかき混ぜたりしながらひたすら焙煎を続けます。
焙煎が進むにつれて「チャフ」と呼ばれる薄皮がはがれて出てきます。これは焙煎の邪魔になってしまうので、フーッと息を吹きかけて取り除きましょう。目の粗いザルに移して素早く振り落とすのでもいいですよ。
爆ぜ(ハゼ)
10分程度焙煎し続けると、パチッパチッというポップコーンを作っているときのような音が聞こえるようになります。これは熱によって豆の内部が膨張し割れている状態で、「ハゼ」と呼ばれます。
このハゼは焙煎段階で2回起こり、焙煎がどのくらい進んでいるのかを判断する重要な指標になります。
1回目のハゼ(1ハゼ)は基本的にミディアムローストからハイローストにさしかかったタイミングで、2回目のハゼ(2ハゼ)はシティローストあたりのタイミングで起こります。
一気に冷ます
好みの焙煎度合いになったら、火からおろしてザルなどにあけ、一気に冷まします。
豆にこもった熱でも焙煎がどんどん進んでしまうため、うちわやドライヤーですぐさま粗熱を取るのがポイントです。粗熱が取れたら、そのまましばらく置いて完全に冷ましたら完成です。
自宅で焙煎に挑戦する
それでは、実際に器具を使った焙煎方法を見ていきましょう。
フライパンを使った焙煎
- フライパンに生豆を入れ、弱火~中火で水抜き
- 水分が抜けたら、中火~強火にして焙煎スタート
- 常にフライパンをゆすって煎りムラを防ぐ
- 焙煎スタートから10分程度で1ハゼの発生
- 焙煎スタートから15分程度で2ハゼの発生
- 焙煎が終了したら火からおろし、素早く冷ます
専用の器具などを使わない、おそらく最も手軽に挑戦できるのが、この「フライパン焙煎」です。
フライパンの種類はなんでもいいので、すでに自宅にあるもので問題ありません。たくさんの生豆を一度に焙煎する場合は、深胴の鍋を使った方が上手にできるかもしれません。
手網を使った焙煎
- 手網に生豆を入れ、ふたをしっかりと閉める
- コンロは中火~強火に設定する
- 30センチ程度離したところで手網をゆすりながら、水抜き
- 水分が抜けたら、15センチ程度に近づけて焙煎スタート
- 焙煎スタートから10分程度で1ハゼの発生
- 焙煎スタートから15分程度で2ハゼの発生
- 焙煎が終了したら火からおろし、素早く冷ます
次に、手網を使った焙煎方法です。手網は2000円以下で購入できますので、かなりお手軽です。
フライパン焙煎とは異なり、コンロの火力は常に中火~強火に設定しておきます。手網とコンロの距離感を調整することで水抜きと焙煎をコントロールします。
持ち手の部分が金属でできているものは焙煎中に熱くなってしまうことがありますので、軍手などを用意しておくといいですね。
手回し式焙煎機を使った焙煎
- 筒の部分に生豆を入れ、コンロにかける
- 弱火~中火で水抜き
- 中火~強火にして焙煎スタート
- 焙煎スタートから10分程度で1ハゼの発生
- 焙煎スタートから15分程度で2ハゼの発生
- 焙煎が終了したら火からおろし、素早く冷ます
取っ手をくるくると回すだけで生豆をまんべんなく火に当てることができるので、フライパンや手網よりも簡単に焙煎できるのが手回し式焙煎機です。画像の商品のように、熱源もセットになっているものもあります。
ハンドルを回すスピードの目安は、「1分間に30~40回(約2秒で1周)」です。加熱後の本体は熱を持っていますので、やけどに注意してくださいね。
電動式焙煎機を使った焙煎
- 筒の部分に生豆を入れ、時間と温度を設定する
- ボタンを押すだけで完成
手回し式焙煎機のハンドルを自動で回るようにしたのが、電動式焙煎機です。
コンロにかけて焙煎するものもあれば、温度と時間を設定すればボタンひとつで焙煎が完了するものもあります。少々お値段は張りますが、非常に簡単に焙煎ができるのでおすすめです。
自宅で焙煎するときのポイント・コツ
よりおいしいコーヒー豆を楽しむために、焙煎時におさえておきたいポイントについて紹介します。
まんべんなく焙煎する
コーヒー豆1粒1粒の焙煎度合いが違うと、やはりコーヒーの味も変化してしまいます。煎りムラができないように、常に焙煎機をゆするようにして煎るのがコツです。
ハンドピッキング
ハンドピッキングとは、欠けている豆や煎りムラのある豆を手で取り除く作業のことをいいます。これらの豆は飲んだときの雑味や違和感の原因となりますので、きちんと取り除く手間をかけてあげるのがコーヒーをおいしくするポイントです。
コーヒーを火にかける前の生豆の段階で1度ハンドピッキング、焙煎後に完全に冷ました段階でもう1度ハンドピッキングするのがおすすめです。
焙煎直後は飲まない
コーヒーは焙煎してから時間がたつとどんどん酸化してしまい、鮮度が落ちていきます。ですが以外にも焙煎直後のコーヒー豆はガスを多く含んでいるため、コーヒーをおいしく抽出できないことが多くあります。
約2日ほどコーヒーを寝かせて、ある程度ガスを抜いてから淹れた方がおいしく味わうことができます。
サードウェーブコーヒーとは
最近では、豆の個性を理解したうえで適切な焙煎・挽き方でコーヒーを味わう「サードウェーブコーヒー」の考え方が浸透してきています。
コーヒーといえば中~深煎りで淹れるのが今までの中心でしたが、豆の個性を楽しむためにあえて浅煎りでコーヒーを淹れる人が増えてきています。
自宅焙煎は自分の好きな具合に焙煎を調整できるので、まさにサードウェーブコーヒーの醍醐味を味わうことができます。簡単にできる自家焙煎、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。