水出しコーヒー(コールドブリュー)はその名の通り、お湯ではなく水で低温抽出したコーヒーのことです。
時間をかけてゆっくりと水出ししたコーヒーは、柔らかくまろやかな口当たりと、コーヒーの果実感、そして「甘味」を感じられる点で魅力的です。
この記事では、水出しコーヒーに適した豆の選び方やおすすめの銘柄、自宅でできる水出しコーヒーの作り方についてまとめています。
水出しコーヒーに適した豆の選び方
焙煎度は「中煎り以上」を選ぶ

- フルシティロースト
- フレンチロースト
- イタリアンロースト
コーヒー豆の焙煎は、焙煎時間が短い(浅煎り)ほど酸味が出やすく、深くなるにつれて苦味とコクが増します。
水出しコーヒーを含め、アイスで味わうコーヒーはホットで味わうよりも酸味を強く感じやすいという特徴があります。
浅煎りでも作れないこともないですが、いざ飲んだときに思ったよりも酸味が強くてすっぱくなってしまう…なんてこともありますので、まずは酸味がある程度抑えられた「フルシティロースト(中深煎り)以上」を選ぶのがおすすめです。
程よい酸味が感じられるコーヒーを味わうならフルシティロースト寄りを、苦味とコクのあるコーヒーを味わうならイタリアンロースト寄りの焙煎度合いを選ぶとよいでしょう。
コーヒー豆の酸味は、豆の酸化も要因のひとつです。 酸味の少ない豆でも時間が経つと酸っぱくなってしまう場合があるので、新鮮なうちにいただくのがポイントです。
»コーヒー豆の”いい酸味”と”悪い酸味”とは?
挽き目は「中挽き」程度を選ぶ

- ウォータードリップサーバー:細~中挽き
- 水出しコーヒーポット、フレンチプレス:中~やや粗挽き
豆の挽き方は、味の濃さに関係します。基本的に挽き方が細かいほど水に触れる表面積が大きくなるため、味や香りが濃く抽出されやすくなります。
ウォータードリップサーバーなど抽出時間が比較的短い(2~3時間程度)器具を使う場合は、「細~中挽き」が適しています。
一方で水出しコーヒーポットやフレンチプレスなど抽出時間が長い(8時間以上)器具の場合は、細挽きだと雑味やエグみまで抽出されてしまう可能性があるので「中~やや粗挽き」が適しています。
水出しコーヒーにおすすめのコーヒー豆
水出しコーヒーに適したコーヒー豆は、基本的に酸味の少ない種類です。
逆にコーヒーの酸味をより強く感じたい方は、あえて酸味が強めな豆を選ぶのもありです。コーヒーというよりは100%フルーツジュースに近いような味わいに仕上がります。
ブラジル
まずは王道を。バランスの取れた味わい
苦味と酸味のバランスが取れていて、かつクセが少なくすっきりとした後味が印象的なブラジル。ナッツのような香ばしい香りが個性的です。
ブレンドのベースとして使用されることが多いほど、オールマイティな性格をしています。
「まずは水出しコーヒーを試してみたい」と思われている方は、このブラジルを選んでおけばまず間違いはないでしょう。
さわやかなのどごしでスッと飲めるので、特に飲みやすいアイスコーヒーがお好みの方におすすめです。

コロンビア
甘さと香りを楽しみたい方に
コロンビアもブラジルと同様、苦味と酸味がバランスよく感じられる銘柄ですが、大きな特徴はフルーツを思わせるような甘さと香りです。
さっぱりとしつつも、一口飲めば鼻から抜けていくフルーティなフレーバーとほんのりと残る甘味を感じることができます。優雅な味わいを楽しみたい方におすすめです。

トラジャ
スモーキーな香りが特徴、ミルクに合う
トラジャは優しい苦味とかすかな酸味、そしてパンチの効いたスモーキーな香りが特徴的です。水出しコーヒーで淹れれば、酸味・苦味のバランスの取れた味わいになるでしょう。
ミルクとの相性もいいので、アイスカフェオレなどにアレンジしてもおいしく楽しむことができます。

マンデリン
ガツンとくる苦味、飲みごたえが抜群
マンデリンは力強い苦味とガツンとくる深いコクが特徴的。
トラジャとは異なり、香りはハーブやシナモンなどと例えられる独特のものです。飲みごたえのあるアイスコーヒーを作りたい方におすすめです。
酸味がほとんどない銘柄というイメージがあるかもしれませんが、浅く煎れば果物のような酸味を感じることができます。
でもアイスコーヒー用にするなら、やっぱろ深煎りでマンデリンならではの苦味とコクを楽しむのがよいですね。

失敗しない水出しコーヒーのコツ

基本の分量は「コーヒー豆1:水12」
好みにもよりますが、コーヒー豆:水=1:12が望ましいでしょう。
使う水の量を、12で割ればコーヒー豆の分量が算出できます。例えば1リットルの水に対して、コーヒー豆は約83g用意します。
この割合を基本に、薄めに抽出したい場合はコーヒー豆の量を減らし、濃いめに抽出したい場合は量を増やしてお好みのアイスコーヒーになるよう調整してみてください。
抽出時間はたっぷりと
漬け込むタイプ(浸漬式)の場合は、7~8時間程度は置いておき、しっかりと味が抽出されるのを待ちましょう。ポタポタ水滴を落とすタイプ(滴下式)なら、水が滴下しきる2~3時間程度は置いておきます。
よりコクを出したい場合は8時間でもOKです。ただ8時間を超える抽出時間になると、雑味やエグみまで抽出されやすくなってしまいます。
それでは、以下で水出しコーヒーの詳しい作り方・手順をみていきましょう。
【器具別】水出しコーヒーの作り方

![]() |
![]() |
![]() |
水出しコーヒーポット | コーヒーパック | ウォータードリップサーバー |
水に漬けておくタイプ | 点滴のように水を落とすタイプ | |
すっきりとして柔らかい味になる | はっきりとした味になる |
水出しコーヒーを淹れる方法としては、大きくこちらの3つがあります。
水出しコーヒーポットやウォータードリップサーバーといった専用の器具を使って淹れる方法のほか、100円ショップなどで売っているお茶パックとコーヒー豆を使って手軽に淹れる方法もあります。
以下で、それぞれのおいしい淹れ方を紹介します。
水出しコーヒーポットで作る方法

画像:水出しコーヒーポット 1000ml 8杯用 ブラウン/HARIO
用意するもの | 分量 |
---|---|
水出しコーヒーポット | 500~1000cc |
挽いたコーヒー豆 | 80~100g |
水 | 500~1000mL |
ポットにコーヒー豆を入れるフィルター(ストレーナー)が内蔵された、専用の「水出しコーヒーポット」を使った抽出方法です。
1500円ほどから購入できるこの器具があれば、水とコーヒー豆を入れて放置するだけで手軽に水出しコーヒーを作ることができます。
ストレーナーは洗って何度も使うことができるので、物持ちがよいです。ストレーナーを外して使えば、コーヒー以外にも水出しのお茶などの抽出用などにも使えるため、汎用性が高く便利です。
■作り方■
- ストレーナーにコーヒー豆を入れる
- 豆全体を湿らすように少量ずつ水を注ぐ
- 8時間程度置く
- 豆の入ったストレーナーを取り外して完成!
豆の種類や焙煎、挽き方をいろいろ変えて調整することができるので、自分好みの味わいを探す楽しさも水出しコーヒーポットの魅力のひとつです。
市販のコーヒーパックで作る方法

画像:水出しコーヒーパック35g×10パック/南青山マメーズ焙煎工房
用意するもの | 分量 |
---|---|
市販の水出しコーヒー用パック | 1個 |
ポットまたはピッチャー | 1L |
柄の長いスプーンなど | 1本 |
水 | 1L |
水出しコーヒーパックを使って作る方法です。コーヒー専用のパックも売っていますが、お茶パックでも代用可能です。
またすでにコーヒー豆の入った水出しコーヒーパックも売っており、それを使えば挽いたコーヒー豆をわざわざ用意する必要がないので非常に便利です。
パックを買ってきたらそのまま水に浸けておくだけなので、専門的な知識や技術は一切必要ありません。
■作り方■
- ポットに水を入れ、コーヒーパックを入れる
- スプーンなどでパックを押し込み、水を染み込ませる
- ふたを閉めて8時間程度置いておく
- パックを取り出して完成!
手順は「家庭用ポットをで作る方法」とほとんど同じですが、市販のコーヒーパックならコーヒー豆を自分の手で小分けする手間が省けるため、より手軽に水出しコーヒーを楽しむことができますよ。
≫家庭のポットやピッチャーを使った水出しコーヒーの作り方・コツ
ウォータードリップサーバーで作る方法

画像:ウォータードリッパー・スロードリップ ブリュワー/HARIO
用意するもの | 分量 |
---|---|
ウォータードリップサーバー | 440~1000cc |
スプーンまたはマドラー | 1個 |
挽いたコーヒー豆 | 40~100g |
水 | 440~1000cc |
最後に、「ウォータードリップサーバー」を使った方法です。フィルター部分に挽いた豆を入れ、その上部に取り付けた水タンクから1滴ずつ水を落として抽出するタイプの器具です。
こだわりを感じさせるようなフォルムは、おしゃれなインテリアとして飾っておけるのもいいですよね。2000円台から数万円するものまで、幅広く用意されています。
■作り方■
- コーヒー豆をフィルターに入れる
- 豆に少量の水を加え、かき混ぜながら全体を湿らす
- 水タンクを取り付け、水を入れる
- 2~3時間程度置いたら完成!
ウォータードリップサーバーの特徴は、他の方法に比べ短時間で十分抽出できる点です。
水がぽたぽたとコーヒー豆に落ちて、抽出されていく過程をじっくりと眺めることができるのもウォータードリップサーバーならではです。
≫ウォータードリップサーバーを使った水出しコーヒーの作り方・コツ

水出しコーヒーの器具はどれを選ぶべき?

浸漬式 | 滴下式 | |
---|---|---|
器具名 | 市販のコーヒーパック 水出しコーヒーポット |
ウォータードリップサーバー |
抽出時間 | 約8時間 | 約2~3時間 |
味わい | すっきりとして柔らかい味わい | コクのあるはっきりとした味わい |
上の項目で紹介した抽出方法を分類すると、それぞれ「浸漬(しんし)式」と「滴下式」と呼ばれる仕組みに分類できます。
この2つの仕組みは抽出にかかる時間のほか、味わいも大きく異なります。それぞれの仕組みを詳しくみていきましょう。
浸漬式:まろやかな味がほしい方におすすめ
- 家庭用ポット
- 市販のコーヒーパック
- 水出しコーヒーポット
浸漬式とは、コーヒー豆を直接水に浸けこんでコーヒーを抽出する方法のことをいいます。
浸漬法は同じ分量の水にコーヒー豆を浸けておくので、コーヒーの成分が溶け出すにつれて水の濃度がどんどん高くなっていきます。
濃度が高まるにつれてコーヒーの成分が溶けるすき間がなくなっていき、やがて溶け出せなくなります(飽和状態になります)。
苦味やコクに関係する成分が完全に抽出されないことから、透過法に比べ角の取れた、すっきりとした味わいになります。ゴクゴクと飲めるような飲みやすさです。
透過式:キリっとした味がほしい方におすすめ
- ウォータードリップサーバー
一方で透過式は、水をコーヒー豆に注ぎ、そのまま通過させるようにして抽出する方法です。ドリップコーヒーなども透過法の仕組みを利用しています。
コーヒー豆に対して次から次へと新しい水を注いでいくため飽和状態にはならず、コーヒー豆の成分が止まることなく溶け出していきます。
そのため、透過式は苦味やコクがしっかりと抽出された、パンチの効いた味わいになります。豆の味をダイレクトに感じられるのはこちらの方法です。
まとめ

水出しコーヒーに使用する豆の選び方は、アイスコーヒー用の豆の選び方とほとんど同じです。
冷たくして飲むところは同じなので、アイスコーヒー用の豆でもおいしく作ることができます。
もしどのコーヒー豆を買えばいいのかわからなくなってしまったら、お店で「アイスコーヒー用の豆でお願いします」と注文すれば、店員さんがおすすめを選んでくれますよ。